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僕は君の隣にいる特別な人に逢いに来たんだ。
1
玖渚友の家を最近寝床にしている輩がいるらしい。
電話を通して言っていたことだから本当じゃないかもしれないが、
玖渚が本当だと言うんだ。嘘じゃないだろう。嘘吐きな僕と玖渚は違うんだから。
昔、玖渚がいた開発チームの知り合いだとか言ってたと思う。
男なのか女なのかは聞いていないけど、女だと思う。
女だと願う。
女だと祈る。
だからと言って、ぼくが玖渚の家に行く理由には到底届かない。
ただ、ぼくは、玖渚に呼び出されたから行くだけである。
別に無視をしても良いのかもしれない。
だけど、無視する理由もなかったし、暇だったので、行くことに決めた。
面倒臭いと思ったことはない。
玖渚に
特別な彼女に逢いに行くのだから。
2
京都一の豪邸住宅街、城咲にある玖渚のマンション。
交通手段は徒歩で3時間以上。
「――――いったい何のために…………」
深く考えずにそう嘆いてみる。独り言に返事が返ってくる訳もなく、ぼくはマンションに向けて足を進めた。
玖渚のマンションの前に到着し、少し周囲を見回してみる。
特に何と言ったことでもないのだが、嫌な予感がした。
そう、例えるなら、もう二度と逢うことはないだろう人間失格と初めて出逢った時のような悪寒。
玄関ホールにいる岩のような警備員さん達の視線の中を顔パスで抜けて、エレベーターホールに向かう。
エレベーターの前につくと、エレベーターの位置は高い所にあった。
ボタンでエレベーターを呼び出し、少し待つ。
待つことは嫌いじゃない。
チンッという音の後にガーっと扉が開く。
中に入って、玖渚の部屋に行く時と同様、鍵を使ってケースを開け、31階と32階のボタンを露出させ、
玖渚の部屋へ続く32階のボタンを押した。
重力に反する感覚が約1分。
エレベーターの上にあるワイヤーを今 切ったらどうなるのか等とマイナス的なことを考える。
戯言だよ。
32階に止まったエレベーターから降り、正面にある鉄板製の扉の前に移動する。
いつものやり方で、その扉を開け、中に入った。
開けた其処にいたのは、白色のマグカップを持った、知らない黒色の輩だった。
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第2章|