ぼく(語り部) ――――――――――――― ≪英雄主義者≫
浅野みいこ(あさの・みいこ) ―――――― ≪合理主義者≫
安久玉城(あく・たまき) ―――――――― ≪自由主義者≫
赤生戸須(あかう・とす) ―――――――― ≪便宜主義者≫
有里アリア(あり・ありあ) ――――――― ≪感傷主義者≫
淺生利理莉(あそう・りりり) ―――――― ≪瑣末主義者≫
網木興亜(あみき・きみあ) ――――――― ≪神秘主義者≫
哀川潤(あいかわ・じゅん) ――――――― ≪楽天主義者≫
玖渚友(くなぎさ・とも) ―――――――― ≪愛他主義者≫
結局のところ、最悪の不幸は決して起こらない。
たいていの場合、不幸を予期するから悲惨な目にあうのだ。
バルザック
「答えろ。」
「だから、さっきから、何が聞きたいんですか?」
彼女はぼくを舐め回すような目で見る。
嫌な目。嫌な口元。嫌な言葉。嫌な……
ニヤニヤと口元だけ笑いながら、ぼくを見る。まるで背中に海鼠のようなヌルヌルしたものを這わされたような、そんな視線でぼくを視線で殺す。
「アンタの思惟を聞きたいのさ。」
「何を言ってるんですか、ぼくは友と違って
利己主義で
快楽主義で……。
そして何より、あなたと違って
厭世主義で
現実主義なんですから。」
ぼくは自虐的に溜息を相手にも分かるように吐いて見せた。
「馬鹿の前で嘘をつくのは、間違いだね。」
彼女は、呆れた顔で視線をはずして溜息をついた。ぼくは、あえて何も言わない。
「アンタらしくも無いね。」
「ぼくはぼくですよ。あなたがあなたのように。」
ぼくは、一言一言に間違いが無いように答えた。間違えようが無いけれど、間違えてしまってはいけない言語。
豚を騙すことは出来ないのだから。故意で騙そうと考えなくても嘘吐きには嘘は通用しない。
「そうだね。アタシがアタシのようにアンタはアンタだ。」
くつくつと笑って、息を吸ってとめた。そして、ぼくと目を合わせた。
「帰れ。バイトは終わりだ。」
ぼくは彼女に背を向けて家のほうへ向かった。
彼女の顔に笑みは無かった。
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